Interview
トレーナーの認知を広げる。正しい情報を発信し、多くの人を笑顔で健康にしていきたい。
[インタビュイー] 株式会社埼玉西武ライオンズ 様
株式会社西武ライオンズ 球団本部
メディカル・コンディショニンググループ
ヘッドリハビリテーショントレーナー兼企画室
門田 大祐 様
インタビュー
1.自己紹介をお願いします
ケガを機に選手からトレーナーの道へと邁進
——自己紹介をお願いいたします。
門田:
埼玉西武ライオンズのヘッドリハビリテーショントレーナーと企画室を兼任している門田大祐と申します。
試合中にケガをして試合に出れなくなった選手の競技復帰までをサポートしたり、手術を受けた選手の退院後のリハビリをサポートしたりするのが主な仕事です。
——この仕事についたきっかけはありますか?
門田:
大学まで野球をしていたのですが、そのときに肩をケガしてボールを投げれなくなってしまいました。それが原因で大学を辞めて、リハビリの道へと進みました。自分と同じように、ケガでプレーできなくなる選手を一人でも少なくしたいというのが一番のきっかけですね。
また、メジャーリーグを経験された小山さんがアメリカから帰国し、大学の野球部のトレーナーとして入ったという影響も大きいです。
——弊社CTOの小山啓太トレーナーとお知り合いになったのはその時期だったんですね!
門田:
そうなんです。ケガで大学を辞めるか悩んだときも相談に乗ってもらい、「自分のやりたいようにやりなさい」と背中を押してもらえました。そこで、理学療法士の資格をとるために大学中退という決断をしたのです。
その後資格をとり、病院で働きながら理学療法の基礎を学んでいた頃、次はスポーツ医療に携わりたいと思うようになりました。どうすればスポーツの現場に携われるかと考えた結果、理学療法士は日本に15万人くらいいますが、アメリカで資格を取得されたアスレチックトレーナーは日本で2~3000人しかおらず、理学療法士とアメリカのアスレチックトレーナーの資格を両方持っている人はほとんどいないことに気付いたのです。誰もやったことのないことをしてみようと思ったのがきっかけで、アメリカへと渡る決断をしました。
その際も、小山さんがアスレチックトレーナーの資格を持っており、お話を聞けたのが大きなきっかけと言えます。このように、節目節目で小山さんに協力頂いたのがとても大きいですね。
2.アメリカと日本のトレーナーへの認識の違いについて
日本は「トレーナー」を一括りで認識している
——日本からアメリカへ渡ったとのことですが、それぞれどんなことを学びましたか?
門田:
日本では患者さん一人を細かく見ながら、色々な角度から評価して問題を突き止めます。逆に、アメリカではそのような細かい指導よりも、コミュニケーションの取り方や、コーチ陣とのやりとりも客観的に評価されたシステムを使い、システマチックに行っていたのが印象的です。
日本では細かく一人ひとりを見て、個々に合ったリハビリプログラムを作る・アメリカではトレーニングでどう強くするかという部分を学びました。
——なるほど!日本とアメリカでは違いがあるのですね。
門田:
そうですね。社会的認知もされているアスレチックトレーナーという資格もある通り、アメリカでは一般の人でもアスレチックトレーナーがどういった仕事なのかを知っています。また、トレーナーの職業もさらに細かく区分されていて、試合中でのベンチ対応、アメリカンフットボールではサイドラインに立って選手の対応など、様々です。
しかし、日本では理学療法士やアスレチックトレーナーも一括りに「トレーナー」と呼んでいます。つまり、「トレーナー」という言葉を広い意味で使っているのです。それぞれの仕事内容も認知されていないため、そこが日本の課題だと言えますね。
——言われてみれば、たしかにそうかもしれません。やはりアメリカで受けた影響は大きいものだったのでしょうか。
門田:
アメリカでは「自分で動かないと、チャンスは来ないんだな」ということを痛感しました。動かなければ動かないほど隅に埋もれてしまうという感覚です。特に僕は英語でのコミュニケーションが上手くとれずに障害となっていました。
そんな状況を脱するべく、日本人らしく謙虚でありながらも自分から積極的に動いた結果、人間関係が広がって楽しく過ごせました。色々な分野の方と繋がれたのが一番大きかったですね。当時は、怖いもの知らずでした(笑)
3.選手をサポートをする上で意識していること
言葉だけでなく動きや表情の小さな変化を読み取る
——アメリカから帰国後、現在の仕事にどのようにしてたどりついたのでしょうか?
門田:
たまたま埼玉西武ライオンズのトレーナーを募集していたのがきっかけです。私が所属していた中学硬式野球のクラブチームが同じだった縁で、ヤクルトの村上宗隆さんのお父さんに相談したのですが「チャンスがあるなら応募しろよ!」のひとことで、その日のうちに応募しました。その後は無事に採用へと繋がりましたね。
——それはまためぐり合わせですね。選手のサポートをする上で意識していることや大切にされていることはありますか?
門田:
一つ目は選手にストレスをかけない環境を提供することです。選手もリハビリをしたくてしているわけではありません。そこで必要以上のストレスをかけないよう意識しています。
そして、選手一人ひとりがスムーズに動けるようにスケジュールを組むことも大切です。常に客観的な指標を持ち、復帰時期や将来の目指すべきところなどに向けて、細かくゴールを設定して選手と一緒に共有しています。選手がケガをすると「いつ復帰できるのかと」と不安になってしまいがちです。しかし、細かくゴールを設定することで「今やらなくてはいけないこと」「これをやれば試合復帰に近づく」という気持ちになれると思います。
また、痛みや思ったように動けないという体験があるとネガティブになってしまうので、そこを上回る成功体験がとても大切です。ただリハビリをするのではなく、何が問題かという部分を明確にし、お互いに目的意識を持って接する方が効果が出ます。コミュニケーションをとるのは大前提として、言葉だけでなく動きや表情の小さな変化に気付けるよう注意していますね。
——小さな変化も見逃さないことが大切ですね。トレーナーである門田さんから見た選手とはどういう存在なのでしょうか?
:
活躍して欲しい存在であり、元気にプレーしてくれることが一番です。やはり、昨日までリハビリをしていた選手が活躍していると嬉しくなります。復帰するタイミングは緊張しますが、難しい場面であるからこそ「大丈夫だ」と根拠を持って言えるようにサポートを心がけています。ケガをする前の状態よりも、もっと良い状態で試合復帰させたいです。
4.今後トレーナーとして目指していきたいところ
ケガを未然に防いで正しい情報を発信したい
——今後トレーナーとして目指していきたいところはありますか?
門田:
ライオンズで働いている中で一番思うのは、ケガ人を0にしたいことです。ケガを未然に防ぐという観点で、力を注いでいきたいと思っています。そうすれば選手もケガをせずに済みますし、チームとしても機能するため、戦力が落ちるのを防げますよね。やはり、そこに注目する必要があると思っています。
もう一つは、小学生・中学生の子供たちの障害予防として、正しい知識を提供していきたいです。お世話になった理学療法士の先生が勤めている熊本の大学での講演や、卒団した中学硬式野球のチームで年1回オフシーズンにトレーニングを教える、保護者の方に様々な情報を提供するといった活動をしています。
仕事柄難しいですが、少しでも僕の経験や正しい情報を外に向けて発信していけたらなと思っています。
——そうやって新たな広がりが生まれていくのですね!子供の障害予防についても関心があるとのことですが、具体的にどのようなことなのでしょうか?
門田:
アメリカでは中学・高校・大学にアスレチックトレーナーがいます。日本で言う保健室の先生のような感じで、体育でケガをした子などをアスレチックトレーナーが対応しています。
アメリカの子供たちがアスレチックトレーナーから教育を受けている様子を見て、一人ひとりをみんなで支えるというのが目に見えて分かる環境だなと思いました。ぜひ日本にも同じようにこの制度が広まって欲しいと思っています。
5.クルルに向けてひとこと
多くの人を健康で笑顔にして欲しい
——弊社はパーソナルジムのエビジムを運営しております。パーソナルジムという立場のトレーナーになにか期待することはありますか?
門田:
様々な年齢層や職業のクライアントと接することができるのが魅力だと思っています。パーソナルトレーニングに来る方は一般の方が多いですよね。なので、正しい情報を提供することが必要かなと思います。
現代は正しい情報・正しくない情報もたくさんあり、便利な反面、怖さもあります。色々な情報がはびこっている中で、上手に取捨選択ができない人も少なからずいるのではないでしょうか。だからこそ、一対一で正しい情報を提供し、その方が納得した上で普段の生活に活かしてくれれば良いと思います。
——ありがとうございます!それでは最後に、クルルに向けてひとことお願いいたします。
門田:
一人ひとりの個性を失わずに、もっと自分の良さを外に向けて発信してみてください。一人でも多くの人を健康で笑顔にして欲しいと思います。一緒にがんばりましょう!